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CDレビュー:Vol.04 "電気グルーヴ / 人間と動物" 2013年07月04日 広瀬のCDレビュー トラックバック:0コメント:0

この時期になると色んな音楽ブログで上半期ベストをやっているのを目にするので、ピストンズの音楽オタク担当としても「ええっ、アレ、やらないんすか? 広瀬さんはやらないんすか、アレ?」という民衆の期待を受け止めつつ、「やれやれ…、しょうがないな…」と片手のワインを飲み干しながら膝の上のシャム猫を床に降ろし、軽やかにMacを立ち上げiTunesで「2013年」のスマートプレイリストを作ってソートしてみたのですが、ベスト10を選べるほど今年の新作を買っていないことに気づいたのでした。
「あっ、俺…、今年金なかったんだ」と気づいたところで、ワインはいろはす(の空ペットボトルに水道水を注いだもの)に、シャム猫は最近妙に湧いている蟻に、そうしてあんなに目を輝かせていた民衆はみんな一斉に喧騒の中へ姿を消してしまったのでした。

……さっ、「いったいここはどこなんだ?」と村上春樹ばりの感傷に浸りたい気持ちになってきましたが、電話をかける緑もいないわけですし、ベスト10とまではいかないまでも今回は2013年のアルバムからこの一枚を取り上げてみましょう。

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電気グルーヴ / 人間と動物(2013)

アメリカ、ニュージーランド、イギリスと続いていたので、次は漠然と日本人かなあと思っていたこともありますし、日本を代表するテクノユニット、電気グルーヴの新作です。
電気グルーヴ、皆さんはどんな印象をお持ちでしょうかね。近年は石野卓球のワールドワイドなDJ活動とピエール瀧の役者業が有名なんでしょうが、僕と同世代くらいだと懐かしのポンキッキで使われていたこの曲とか、Shangri-Laとかのイメージもお持ちでしょうか。もう一つ上の世代の方だとオールナイトニッポンとかになるのかもしれません(伝説的なラジオなのに全裸放送とか…)。
僕も高校生くらいの頃にTSUTAYA(匝瑳市民的にはTADAYA2だというどうでもいい補足をしておきます)でVITAMINを借りたのがきっかけではまりました。多分人生で初めてまともに聞いたテクノ音楽です。

彼らの魅力といえば「陰湿だけど痛快な悪意」や「強烈なキャッチーさ」など色々あると思いますが、個人的にはある種の「軽さ」だと思っています。ピエール瀧という人は言うまでもなく、石野卓球もものすごく根暗な人のはずなのに何とも言えない「軽さ」を持っています。
彼らの持ち味である「軽さ」が足りないような気がして「J-POP」以降の作品はそんなにピンと来てなかったのですが、このアルバムは本当に素晴らしいです。彼らの「軽さ」がいかんなく発揮されています。
このアルバム、何しろビートがかなり気持ちいいです。一聴しただけではかなりシンプルな音作りですが、緻密な計算があるのでしょう。「リズムの肝は音が鳴っているときじゃなくて、鳴っていないときだ」というようなことをかつて卓球が言っていましたが、このアルバムは本当に「音の隙間」が気持ち良いです。


この「何かを言っているようで何も言ってない歌詞」もかなり電気節。

個人的な白眉は「ドリフのほんとにほんとにご苦労さん」をサンプリングした"Prof. Radio”とまさかのThe Monkeesの日本語カバー”電気グルーヴのSteppin' Stone”でしょうか。後者はうねりまくるベースラインも魅力で、ちょっとロック的なアプローチをしているときの電気グルーヴはいつも楽しい。

「話すコトバとってもポジティブ 思う脳ミソホントはネガティブ / バカなヤングはとってもアクティブ それを横目で舌ウチひとつ」なんて歌いながら、飄々と、軽々と立ちまわってみせる電気グルーヴの二人の音楽は。根暗な我々に翼をくれるようで本当に清々しいです。

さて、2013年、他にも色々取り上げたい作品はあるのですが、それは次回に回しましょうかね。


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