久しぶりの更新になりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
特に面白い書き出しも思い浮かばない僕ですが、そうですね、じゃあ、あれしましょうか? 全裸で書いてることにしましょうか?(最終手段)セックス! セックス!(中学生)セッ……、あっ、帰らないでもらってもいいですか?
はい、クソどうでもいい書き出しで皆さんの貴重な識字能力を浪費させたところで、本題です。今回からはピストンズ#4「JOE MEEK」に向けて、イギリスのロックンロール特集と洒落込もうかと思います。
The Pirates / The Very Best of Rock's Original Hellraisers (2000)
第一弾はザ・パイレーツです。だっちゅーのじゃないです。最早こっちのほうがマイナーかもしれませんが。皆さんもDMMで300円でストリーミングしてがっかりした口ですか?(下世話)
何となく名前を聞いたことがある人は、パブロックの代表アーティストだとか、ドクター・フィールグッドの
ウィルコ・ジョンソン やミッシェル・ガン・エレファントの
アベフトシ が敬愛するミック・グリーンというギタリストがいたバンドということで認知されているんじゃないかと思います。
その理解で問題ないんですが、さて皆さん、ジョニー・キッドというロックンローラーをご存知でしょうか。一曲聴いてみましょうかね。
この眼帯の男がジョニー・キッドです。あっ、この曲聞いたことある!
ザ・フーがカバーしてたやつ や! とか思ってくれる読者はほとんどいないと思いますが、この曲は英国人的にはクラシックの一つで、色んなバンドがカバーしているのをよく聞きます。
彼が活躍していたのが50年代後半から60年代前半。彼は恐らくビートルズ以前の数少ない英国ロックンロールスターの一人なんじゃないでしょうか。彼と並びうるのはクリフ・リチャード・アンド・ザ・シャドウズくらいだと思います(彼についてはそのうち触れたいと思います)。
さっきの曲と
Please Don’t Touch (
モーターヘッドとガールスクールのコラボバンドのカバーバージョン が最高です)という二曲の代表曲を残して、ジョニー・キッドは残念ながら1966年に交通事故でこの世を去ります。その10年後、パンクロックの時代に全盛期のメンバーで再結成したのが無印のザ・パイレーツです。
オリジナル・アルバムでは
Out of Their Skulls が有名ですが、あえてこのベストアルバムを選盤したのはライブテイクも満遍なく入っているから。彼らは本当にライブが素晴らしい。ジョニー・スペンスの野太い声も良いですし、フランク・ファーレイのシンプルなドラミングもツボをついてますし、何しろミック・グリーンの強烈なカッティングです。スタジオテイクもパブロック的なもっさり感があって良いんですが、やっぱりシャープなライブも楽しみたいということで、このベストアルバムは本当にオススメです(とか思いながらAmazon見たら、新品の値段がものすごく高騰してますね…。中古で是非)。
ミック・グリーンは2010年に鬼籍に入られましたし、その少し前にミッシェル・ガン・エレファントのアベフトシも亡くなられて、ウィルコ・ジョンソンも癌で余命いくばくかというのを公表されています(精力的にライブ活動をされているようですが)。こうなってくるとパブロックカッティング系ギタリスト最後の砦はTheピーズのアビさんでしょうか。彼には末永く頑張っていただきたいと思います。
※パブロックって何ぞ? ハードロック/プログレ全盛の、ロック産業が巨大化した七十年代に、アンチテーゼ的にシンプルな曲を、小さなパブのような場所で演奏するムーブメントのこと。いなたいもっさり感が特徴だけど、Dr. FeelgoodやThe Piratesは例外的に一部シャープ。
Nick Lowe 、
Elvis Costello(の1st) 、
Ian Dury などが有名。
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この時期になると色んな音楽ブログで上半期ベストをやっているのを目にするので、ピストンズの音楽オタク担当としても「ええっ、アレ、やらないんすか? 広瀬さんはやらないんすか、アレ?」という民衆の期待を受け止めつつ、「やれやれ…、しょうがないな…」と片手のワインを飲み干しながら膝の上のシャム猫を床に降ろし、軽やかにMacを立ち上げiTunesで「2013年」のスマートプレイリストを作ってソートしてみたのですが、ベスト10を選べるほど今年の新作を買っていないことに気づいたのでした。
「あっ、俺…、今年金なかったんだ」と気づいたところで、ワインはいろはす(の空ペットボトルに水道水を注いだもの)に、シャム猫は最近妙に湧いている蟻に、そうしてあんなに目を輝かせていた民衆はみんな一斉に喧騒の中へ姿を消してしまったのでした。
……さっ、「いったいここはどこなんだ?」と村上春樹ばりの感傷に浸りたい気持ちになってきましたが、電話をかける緑もいないわけですし、ベスト10とまではいかないまでも今回は2013年のアルバムからこの一枚を取り上げてみましょう。
電気グルーヴ / 人間と動物 (2013)
アメリカ、ニュージーランド、イギリスと続いていたので、次は漠然と日本人かなあと思っていたこともありますし、日本を代表するテクノユニット、電気グルーヴの新作です。
電気グルーヴ、皆さんはどんな印象をお持ちでしょうかね。近年は石野卓球のワールドワイドなDJ活動とピエール瀧の役者業が有名なんでしょうが、僕と同世代くらいだと懐かしのポンキッキで使われていた
この曲 とか、
Shangri-La とかのイメージもお持ちでしょうか。もう一つ上の世代の方だとオールナイトニッポンとかになるのかもしれません(伝説的な
ラジオなのに全裸放送 とか…)。
僕も高校生くらいの頃にTSUTAYA(匝瑳市民的には
TADAYA2 だというどうでもいい補足をしておきます)で
VITAMIN を借りたのがきっかけではまりました。多分人生で初めてまともに聞いたテクノ音楽です。
彼らの魅力といえば「陰湿だけど痛快な悪意」や「強烈なキャッチーさ」など色々あると思いますが、個人的にはある種の「軽さ」だと思っています。ピエール瀧という人は言うまでもなく、石野卓球もものすごく根暗な人のはずなのに何とも言えない「軽さ」を持っています。
彼らの持ち味である「軽さ」が足りないような気がして「J-POP」以降の作品はそんなにピンと来てなかったのですが、このアルバムは本当に素晴らしいです。彼らの「軽さ」がいかんなく発揮されています。
このアルバム、何しろビートがかなり気持ちいいです。一聴しただけではかなりシンプルな音作りですが、緻密な計算があるのでしょう。「リズムの肝は音が鳴っているときじゃなくて、鳴っていないときだ」というようなことをかつて卓球が言っていましたが、このアルバムは本当に「音の隙間」が気持ち良いです。
この「何かを言っているようで何も言ってない歌詞」もかなり電気節。
個人的な白眉は
「ドリフのほんとにほんとにご苦労さん」 をサンプリングした"Prof. Radio”とまさかの
The Monkees の日本語カバー”電気グルーヴのSteppin' Stone”でしょうか。後者はうねりまくるベースラインも魅力で、ちょっとロック的なアプローチをしているときの電気グルーヴはいつも楽しい。
「話すコトバとってもポジティブ 思う脳ミソホントはネガティブ / バカなヤングはとってもアクティブ それを横目で舌ウチひとつ」 なんて歌いながら、飄々と、軽々と立ちまわってみせる電気グルーヴの二人の音楽は。根暗な我々に翼をくれるようで本当に清々しいです。
さて、2013年、他にも色々取り上げたい作品はあるのですが、それは次回に回しましょうかね。
お久しぶりです、作家の広瀬です。
芝居から逸脱して何か違うものでも取り上げようかと思いましたが、予定通り今回はこいつの話をします。
XTC / Black Sea (1980)
自分が大好きで大好きでしょうがなくて夜も眠れないというバンドは五つか、六つくらいありますが(曖昧)、XTCは確実にその一つです。大好きです。夜も眠れません。嘘です、夜は寝ます。そこそこ寝ます。
とにかく、一曲聴いてもらいましょう。
VIDEO サージェント・ロックが女の子をメロメロにしてくれるさー、みたいなアホみたいな曲ですが(実際バンドとしては半分くらいふざけて書いていたらしい)、この曲を初めて聴いた高校生の時分、自分で英紙を翻訳しながら(当時はXTC、国内盤がまともに出ていなかったので)、サージェント・ロックというヒーローについて勝手に夢想していました。
そう、こないだのピストンズのサージェント・ロックの元ネタは、
DCコミックスの半端無く強い軍人 ではなく、XTCのこの曲なのです。まあ、アンディ・パートリッジ(XTCのボーカル、ギター)としてはDCのあの軍人をイメージしていたのかもしれませんが。
まあ、ピストンズの話はこんなもんで、このアルバムの話をしますと、とにかくリズムが最高に気持ちいいです。XTCファンの間では比較的後期の
Skylarking とか
Oranges & Lemons 辺りの人気が高い印象がありますが、僕は初期から中期に一番愛着があります。何故なら、テリー・チェンバースというドラマーがいるから。
VIDEO 独特なフレーズと強烈なビート感、そこに絡みつくコリン・ムールディングのベース、ザクザク刻み込んでくるアンディ、デイヴ・グレゴリーのギター、テリー・チェンバース在籍時のXTCにしかない魅力です。
そして、このアルバムの魅力のもう一つが「反復」。上の曲にも顕著ですが、同じフレーズを繰り返しながら曲を構成していく、これは全時代通してXTCの作曲方法の特徴です。例えばこの曲。
VIDEO ちょっと変化する部分はありますが、基本延々同じリズムの反復です。なのにアヴァンギャルドな方向に振れず、ポップな曲として完成させる彼らは偉大です。
アルバムとしては最後の作品、
Wasp Star (値段が妙に高騰している…。中古で買いましょう)には
Stupidly Happy というワンコードで作られた曲があり、これがこの作風の究極系でしょう。
ワスプ・スターでおや?と思ってくれた方はいるでしょうか。そう、サージェント・ロックの作中にはいくつかXTCネタが散りばめられています。気になった方はXTCの世界へ足を踏み入れていても良いかもしれません。例えばとあるアルバムの一曲目には怪人ピーター・パンプキン・ヘッドが待っていたり、総統ジェネラル(もちろん上の曲が元ネタです)の組織にもどこかで出会えるでしょう。
遠藤真太郎君客演の舞台を観に行ったらJetのAre You Gonna Be My Girlがかかっておりました。
VIDEO 大半の人は恐らく聴いたことあるはずです。そうです、ダイノジ大地のエアギターのアレですね。日本ではテレビでも使われまくっていたせいでやけに知名度の高いこの曲(芝居でも三回以上使われてんの見ました)、演奏しているJetがどこの国のバンドかご存知ですか?
アメリカ? イギリス? いいえ、違います。オーストラリアです。意外ですか? 驚きました? そうでもないですか? えっと、空気は読めますか?
話を続けます。オーストラリアのロックと言ってAC/DCを思い浮かべたあなたはそこそこロック好きだと思います。INXSとかMen at Workの名前を出したあなたは多分おっさんです。ビージーズとか言ってくるあなたはグッチ裕三です。あと、最近オーストラリアの音楽で流行ったのはこの曲でしょうか。
VIDEO 居酒屋とかでひところFUN.のWe Are Youngと同じくらいかかってたので聴いたことある方もいるかと思います。この曲、こんなアコースティックな音ながらアメリカで大ヒットしました。こんな感じで、オーストラリアの音楽は思い出したように英米で、当時の流行とは違う視点を持ち込むような形でヒットします。
上の曲の彼はゴティエ(Gotye)という名前で、男性のソロアーティストです。えっ、じゃあ、この綺麗な背中の美人は誰? 誰なの?とぐいぐい来てくれたあなたはきっと優しい人だと思います。本題に入りましょう。
Kimbra / Vows (2011)
彼女の名前はKimbra、ニュージーランドのシンガーソングライターです。じゃあ、クソ長い枕でしてたオーストラリアの話は何だったの?とご立腹かもしれませんが、ニュージーランドとオーストラリアはかなり密接な関係の国家らしく、歴史的な話は門外漢なのでよくわかりませんが、何故かオーストラリアとニュージーランドでは同じような音楽が流行ります。実際、このアルバムもニュージーランドとオーストラリアの両国でプラチナ・ディスクを獲得しています(オーストラリアのグラミー、ARIAにもノミネートされていたような。獲ったのは上述のGotyeですが)。
とりあえず一曲聴いてもらいましょうか。
VIDEO どうですか、この濃厚でドラマチックな楽曲。冗談抜きで掛け値なしの名曲だと思います。この一曲で英米ガールズポップの歴史が俯瞰出来ると言っても過言ではありません。R&B的であり、
Be My Babyの例のドラムパターン が出てきたり、二番からモータウン的なリズムになったりと、様々な要素がひとつの楽曲に無理なくまとめられています。
この曲、ルーザーズでもかなり象徴的に使わせていただきました。祐樹が走りだし。一気にドラマがまとめて動き出す大ヤマ場です。覚えていてくている方がいたら幸いです。ちなみにサビはこんな歌詞です。
Everyday's like talking in your sleep! Love is like a silhouette in dreams! Open up your heart! Open up your heart! Open up your heart and let me pull you out 毎日は眠っているあなたに話しかけているみたい 愛はまるで夢の中のシルエットみたい 心を開いて、心を開いてよ 心を開いて、あなたをそこから連れ出させて
しかし、このアルバム、アメリカではスマッシュヒット程度(ビルボード200で最高位14位)に終わりました。こんなに素晴らしいんだからもっと劇的に売れても良いんじゃないかと思うのですが、オーストラリア/ニュージーランドに対する英米のリアクションは何故かこんな感じです。オーストラリアには先のJetも尊敬するバンドとして名前をあげたYou Am Iという大御所ロックバンドがいるのですが、彼らも英米では無視され続けています。
オーストラリア/ニュージーランドの音楽、少なくとも日本人の感性には響くものがあるように思うので、また別の機会に色々取り上げてみたいと思います。
余談ですがこの曲、制作をやってくださっているTさんがやけに気に入ってくれていました。オーストラリア盤、USA盤と二枚出ていて、USA盤の方を誕生日にあげたらとても喜んでくれました。音響としてはこういうのは嬉しいものです。
次はルーザーズの残りをまとめてやるか、あるいはサージェント・ロックの話でもしようかと思います。サージェント・ロックの元ネタは、実はアメコミじゃないんですよ、という話でも。
この曲も素敵なので是非。Cameo Loverもそうでしたが、ダンスが素晴らしいね。
VIDEO
誰も期待していない気がしますが、劇団のブログが開設されたということで、早速ですが作家広瀬がCDレビューなんぞ書いてみます。
そのうち芝居とは全く関係のないものもがんがん取り上げるとは思いますが、とりあえずは公演と関係のあるものの話をしましょうということで、こいつを取り上げます。
The Queers / Pleasant Scream (2002)
The Queersはアメリカの有名ポップパンクバンド。日本での知名度はそこまで高くないですが、知っている人は知っています。RamonesとBeach Boysに多大な影響を受けつつ、Green Dayら後進のポップパンク勢にも多大な影響を与えているバンドであります。日本だとマキシマム・ザ・ホルモンのマキシマムザ亮君が好きなバンドとして名前をあげていましたね。
何でこれが公演と関係あるかって? これを聴いていただきましょう。
VIDEO 熱心なピストンズファンの方はもうお気づきですね? いますか? いますか熱心なファン? いますね? いますね熱心なファン?
はいっ、そうですね、旗揚げ公演「ルーザーズ」の幕前曲なんですねー。ついてきてますか?
ルーザーズは童貞コメディをやろうということで始まった企画ですが、自分としては四人でプロットを決めた段階で童貞なら学園映画的にやろうと思っていました。
で、この世で最も学園映画的なバンドと言えば独断と偏見によりQueers! …ということで、どっかで絶対にQueersの曲はかけようと思っていました。「プロムに招待されなかったぜ」なんて何とも悲しい曲を歌うバンドはQueersくらいしか思い浮かびません。日本に置き換えると「成人式のあとのクラスの飲み会に声がかからなかった」的なことでしょうか。
このアルバムはそういうしみたれったテイストはやや薄いですが、ポップでキャッチーな曲で溢れております。ジョーイ・ラモーンの残したデモを完成させたI Wanna Be Happy、代表曲の一つに数えられるPsycho Over Youなど名曲の嵐です。そのものまさになタイトルのHomoという曲の歌詞も素晴らしいです。
VIDEO Life's not fair, are you aware? Be proud of who you are and don't be scared. (人生は公平じゃない、わかってるかい? 自分自身に誇りを持て、怖がるな) The Queers "Homo"
まあ、このあとに「お前ホモだろ、みんな知ってるぜ?」と続くわけですが。
彼らの「人生なんてクソみたいだけどそれでも生きていくんだ」的なコンセプトは自分の作風にもかなり影響を与えております。まあ、パンクが好きでポップなものが好きな方は是非是非聴いてみてください。
いつになるかわかりませんが、次ももう少しルーザーズの話をしましょうか。ニュージーランドの歌姫の話です。